2011年に自宅用に製作したソファ。
鼓バネを用いたソファに日頃から腰掛けてくつろぎたい、
椅子張り職人として、そんな想いを形にしたソファ。
自宅用なのでいろいろと試して見たいことも…。
・座面には否定的な低反発ウレタンを背に用いてみては?
・座面の詰め物として藁が使えるのであれば、シュレッダー後の紙は?
・座面はおありバネの鼓バネ+束土手のソファに長時間腰掛けてみたい。
・座面のやや低めでゆったりした座り心地にしよう。
・ちょこっと横になれるコンパクトな3人掛けソファをつくろう。
以下のBase Sofaの写真での紹介で
◎ Base Sofa classicに採用したい点
▲ Base Sofa classicでは改善すべき点
AZUMAにてオリジナルの鼓バネのソファを発表するに
あたりこのソファを元に作り上げることに。
「鼓バネ+束土手」を「椅子張りの基本」と考え、
AZUMAの椅子張り職人の技能の根底としたいという想いから
「Base Sofa」と名付けました。
正面-Base Sofa
▲ 座面は木台輪に鼓バネのあおりにシュレッダー後の紙を使用。
◎ 鼓バネの入ったソファで座面の脱着式のソファは見たことがありません。
◎ 横幅165cmと小ぶりな3人掛けソファ。
斜め前-Base Sofa
◎ 背はクッション式にして脱着式に。
(※冬場はこたつの背もたれに移動してしまう)
◎ 背クッションの中身は一部低反発ウレタンを使用。
◎ 低反発ウレタンの反発具合で角度が広がり割りと快適。
斜め後ろ-Base Sofa
◎ 本体背もたれは板状。
◎ 本体背板で100度の角度を実現。
▲ 脚は製作時は高さ2cmの四角の脚でしたが…背に寄りかかると後ろに倒れる
高さ6cmの前後脚兼用の脚にして後ろに倒れるのを軽減
正面:座面を外したところ-Base Sofa
◎ 座面は脱着式に。
◎ 本体座面の中は収納式にしてちょっとしたものを収納。
▲ 座面の受けが細すぎて上からの細かいゴミが下の収納に落ちていた。
7年経って座面と背クッションの張り替えを行うことに。
また、Base Sofa classicの製作にあたり改善点を洗い出してきます。
▲改善点の洗い出し
・座面のバネを巻き数の多い(高さの高い)バネにしたい
・収納部分に座面の隙間から落ちる細かいゴミがたまる
・背もたれがやや低いので少し高く
・4個のコマの脚では背の荷重によって後ろに倒れたの改善
・脚の形状の改善とあわせて見せる脚として考えたい
・脚を投げ出せるオットマンを置きたい
・座面の詰め物をシュレッダー後の紙からパーム椰子に変更
座面リフォーム開始-Base Sofa
座面を取り外して、底張り生地をはがし、表生地をはがす。
座面の縫い代を土手に絡げているところ。
子供達が小学生、中学生の頃、無意識に飛び跳ねていた座面。
それでも、高さがずれなかったのは、
土手に生地の縫い代をしっかりと縫い付けていたからかな。
こういったひと手間がソファの長持ちにつながります。
自宅用ならではの世界にひとつだけの詰め物-Base Sofa
現在の様にウレタンフォームが主流になる以前は、
パーム椰子や藁、芝草、馬毛などが詰め物として使われてきました。
個人情報保護のためAZUMAでも使用後の紙をシュレッダーしていますが、
シュレッダー後の紙を束ねながら、ふとっ思いつきました。
パーム椰子や藁、芝草が使用されるのであれば
木で出来た紙もまた椅子の詰め物として使えるのではないか。
詰め物というのは写真で見えている紙の部分の他、
麻布で包んでいる土手部分の中身も詰め物を使用します。
よって、土手部分の中身もシュレッダー後の紙を使用しています。
今回はがしてみて、紙の粉が埃っぽく座面の中に落ちていましたが、
これは、藁でも芝草でも同じです。
妻が心配していたカビについては、藁など同様カビておりませんでした。
束土手-Base Sofa
束土手の上の詰め物(シュレッダー後の紙)を取り除くと
束土手が見えてきました。
7年間腰掛けながらシュレッダー後の紙でも問題なく腰掛けることが出来ました。
ただし、針を刺すと紙に刺さってしまい、
非常に効率が悪く仕事としてはNGだったのを覚えています。
しかしながら、シュレッダー後の紙を使用した詰め物も
使用感は出ているものの、型崩れなどは他の詰め物と同様でした。
次に紙を使用する場合は、刺身のツマに使用している様な
細長いものであれば作業性も悪くないだろうと思いました。
ただし、お客様の椅子にはボリューム感のあるカールしてある
パーム椰子などが適しているということもはっきりとしました。
座面裏側-Base Sofa
バネの下端を支え続けてきた麻面テープの力布。
バネの下端はしっかりと正三角形の3点止めで固定されており、
力布が切れない限りバネの下端がずれることはありません。
もちろん7年間の使用でも何の問題も無く3点止めが機能していました。
バネの使用で力布が落ち込んできている-Base Sofa
力布という麻面テープにバネが固定されており、
長年の使用で力布が下に垂れ下がってくるのがバネ椅子の特徴。
7年の使用では力布はたいして伸びていない。
通常、バネ糸が切れたり、バネが折れていなければ、
力布が伸びていても新しい力布を下から新たに張り込むことで改善できる。
Base Sofa classicの座面仕様でBase Sofaを張り替え完了-Base Sofa
Base Sofaを製作するときには手に入らなかった八巻の鼓バネを
中バネに使用し、シュレッダーのゴミを詰め物に試していたBaseSofaの仕様を
本来のパーム椰子のクラシカルな仕様で作り上げた座面を設置し、
Base Sofa classicを世に出すための張り替え完了。
2016年12月、81年前の昭和10年10月につくられた
あおりバネのソファの張り替えを行う機会がありました。
それでも力布は切れておらず、
バネの上端を絡げているバネ糸が数本切れている状態でした。
それまでに2回ほど張り替えを行っていたようですが、
力布の下からの新たな力布での補強、
土手の麻布の交換などの補修で済んできたようです。
その際、81年の時を経てバネの吊り直しを行いました。
改めて、鼓バネを使用した昔ながらの作業方法は素晴らしいもので、
耐久性に富んでおり、そして、伝えていくべき技能として再認識できました。
「Base Sofa」から「Base Sofa classic」へ-Base Sofa
AZUMAの椅子張り職人として鼓バネの工法は、
昔の椅子に使われていた、今ではやらない方法ではなく、
現在の椅子張りの基になっている、根本的な工法。
「Base Sofa」=「原点の座り心地のソファ」と位置づけ、
詰め物はシュレッダー後の紙ではなく、
クラシカルなパーム椰子を使用し製作する運びとなりました。
「Base Sofa classic」はこのような想いと経緯で製作されました。