イノ・ウエの独り言 
井ノ上が日頃”椅子張り職人”として感じたこと

2007年 10月 10日
一級 椅子張り技能士 試験合格(家具製作 イス張り作業)

AZUMAのイス張り職人から 一級、二級の椅子張り技能士認定者が出ました

正確には、一級は「厚生労働大臣認定 一級 家具製作(いす張り作業)技能士」、二級は「東京都知事認定 二級 家具製作(いす張り作業)技能士」という名称になりますが、AZUMAのイス張り職人から一級 2名、二級 2名が技能士検定にチャレンジしてみごと全員合格し無事に認定されました。
技能試験合格までのプロセス
実技試験2007年 8月26日(日)
学科試験2007年 9月 2日(日)
合格発表2007年10月10日(水)
表彰式2007年12月 9日(日)

【1級 実技試験】:制限時間は5時間。
鼓バネを9個、詰め物としてパームヤシなどを用いて直径45cmの丸スツールを張り上げます。

【2級 実技試験】:制限時間は5時間。
連結バネとウレタンフォームを用いて45cm角の角スツールを張り上げます。


左から、前川、荒川(アラ・カワ)、太平、大野

アラ・カワも晴れて 一級 椅子張り技能士 となりました。

…思えば、2級のイス張り技能試験の練習を開始したときに「5時間もあるなら余裕で終わる…」となめてかかり最初の練習では半分しかできなかったかとを思い出しました。
その後の練習で2級の実技試験当日は45分の時間を残して試験会場で2番目に早く終わり合格することができました。

2級の実技試験の工程よりもはるかに濃い作業を行わなければならない1級の実技試験も2級と同じく制限時間は「5時間」。
今度は「たった5時間しかない。相当がんばらなければ…」と、不安ながらも頑張りがいのある試験に臨みました。

1級の最初の練習のときには5時間で3分の1の工程しか進みませんでした。そこから、約1ヶ月間…。仕事を終え午後9時や10時からがむしゃらに1級の練習を続けました。


日頃からイス張りを仕事に行っている私達が、「なぜ、イス張り技能試験の練習をわざわざ行わなければならないのか」と、いうと…

イス張り技能試験の実技試験の内容が「親方が小僧として仕事を覚え始めた時代より前の作業内容と同様」ということにあります。

今は便利になり以下のように工具や材料が切り替わっています。
・ハンマーと釘 → エアータッカーとステープル
・縫製:手縫 → ミシン
・バネ → ウェービングテープやウレタンフォーム
イス張り技能試験では電動工具を使用しません。そのため、普段使用しない手作業が実技試験のほとんどの時間を奪っていきます。

現代の工具と材料で加工すれば1時間とかからず同じ仕上げ寸法の丸スツールを製作できます。ですが、座り心地となるとやはり違うのです。5時間かけて作り上げたものは1針1針作り上げることで昔ながらのつくりの座り心地となって仕上がります。

アラ・カワが目指した1級 イス張り技能試験はまさに「鋏と張り屋のハンマー、針など」と「イス張り職人の技能」があれば時間はかかるけれどもいつでもどこでもイス張り職人としての技能を発揮できるイス張り技能士。


■実技試験当日■

時間的に制限時間内に終わるかどうかというところまでなんとか手作業の効率を上げてきた成果を本番にぶつけました。

練習でどうしても50分を切れなかった個人的な最初のチェックポイントでなんと開始から、「30分!」。自分で自分の目を疑いました。練習の最中は仕事の対応などでなかなか集中しきれなかったこともあり、本当に目の前の椅子に集中できたんだと感心してしまいました。

そこからは丁寧に落ち着いて作業を進めていき、制限時間に15分を残して1級受験者の中で1番早くに仕上げることができました。


椅子張り技能試験受験を通して「限られた時間内で最高の椅子を仕上げる」プロとして当たり前のことですが、改めてその大変さと重要性をみしめました。


■合否発表■

1週間後に筆記試験、さらに1ヶ月後に合否の発表となりました。

合否の結果は「合格」。

日頃の技能を糧に完全にて作業の仕事をやり遂げました。合否の結果もそうですが、「丸スツール」ひとつを作り上げることで多くの基本を再確認できたことが今回の最大の収穫です。
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